アンボイナガイ

2011年04月27日/ 教材(生物標本)

今日は楽しいおかいぼう♪

私の現在の所属でのお仕事は海での環境教育やら一式なのです。ですので決して遊びほうけているのではないのです!!
アンボイナガイ
今日のお相手はアンボイナさんです。海で遊ぶ人なら誰でも知ってる基礎知識ですが蛇足を承知であえて説明しますと、
アンボイナガイ
アンボイナガイはイモガイという巻貝の一種です。里芋のような円錐形の貝がらをもつのが特徴です。アンボイナに限らずイモガイ類は銛のように変化した歯舌(しぜつ:カタツムリとかの口にあるおろし金のようになっていて餌をこすりとるように食べるための器官)にコノトキシンというペプチド結合で出来た毒液を含ませ、筋肉使って“ぴゅっ”て獲物(魚や貝、ゴカイなどさまざま)に打ち込んで狩りを行ない、獲物が麻痺して死んだところを口吻広げて丸呑みするという摂餌行動をとります。
アンボイナガイ口吻の開いたとこ
この貝の仲間は貝殻愛好家のなかで人気があるらしく海に入って採集した貝をぷらぷら持ち歩いていて身を守ろうとしたイモガイにさされて死亡したとされる例があることが知られています。

この毒はいわゆる神経毒の一種で神経刺激をつかさどる伝達物質受容体と結合したり、能動輸送(Naポンプ)を止めたり、Caチャンネルを止めてみたりと生体内でなかなかおちゃめに振る舞まうことで、体を維持するための最も根幹をなす指令をあらゆる方法でブロックするので狩られた方は“あっ”というまにやられっちゃうというものです、秒殺です。イモガイの仲間は沖縄以南になると種数が増えるのですがどれも何らかの毒性分を持っているのでその辺の知識のない人は触らない方が無難でしょう。とくにこのアンボイナさんは“自分、人間でもいけますよ”という種類なのでかっこいいのです。でもこういう生き物がいるっておっもしろいよなぁと地球さんの懐に感謝感謝です。

海の危険生物の話をするときに必ず出てくるのですがなかなか現実感が伝わらないのでちゃんとした標本を基にお話をしたいなぁと常々思っていて知り合いの知り合いの漁師さんから分けてもらえる機会を得たのでこの機会にがんばるぞ!というわけです。Mさん、漁師さんありがとうです。

あらかた写真を撮ったら冷凍庫へ入ってもらいました(さされるわけにはいかないので)冷凍後に解凍して
アンボイナガイ
殻の内側にある筋肉の設置面を切開切開
アンボイナガイ
多少殻の方に残ったので後は腐らせましょう。とにかく身と貝がらを分離です。
アンボイナガイ
紡錘形の白い塊が毒を生産・貯蔵する器官です。黄色がかったのが針を作ってためておく袋(ちぎれちゃいました)
口吻をたてに切開して毒針の発射する場所を見えるようにします。根元にあるのが吻です
アンボイナガイ
これがびょ〜んと伸びてきて獲物に触れると“ズドン”とやる部分。
アンボイナガイ
吻の先端からは針がでてました(あっぶねぇ、これ以降素手禁止)
アンボイナガイ
アンボイナガイ
これがアンボイナの肝ともいうべき毒セット一式です。黄色いかたまりが筋繊維で吻の伸び縮みに使うようです。
アンボイナガイ
毒針は歯舌の変化したもの、安上がりでいっぱい出来るので使い捨てです。吻のそばに針をストックする入れ物があって
アンボイナガイ
針、満載です
アンボイナガイ
アンボイナガイ
顕微鏡で観察するといやはやえげつない微細構造ですねぇ、セレーションはあるはかえしはついてるはで
アンボイナガイ
針の根元は透明な繊維(おそらくタンパク質ですねぇ)で体とつながっています。これで打ち込んだ毒針ごと獲物を回収するのにたぐり寄せに使います。

(追記4/28:)ちゃんとした顕微鏡で取り直しました。
アンボイナガイ
かえしは二重になっていて先端のカーブやしなりが物に刺さりやすい構造をしていました。
アンボイナガイ

アンボイナガイ
アルコールに漬けたので白濁してみやすくなりました。針の根元にたぐりよせのついたなかなか機能的な一品です
アンボイナガイ
針を回収しアルコールに漬けると少し白濁してみやすくなりました。こんなちいこい針で60kgからのタンパク質(人間)の活動を止めるとかってすげぇなぁ。

さて、本体や毒器官一式は固定後液浸でしょかね。海の生き物は瞬殺、秒殺な毒を持つものが結構います。機会があればまた紹介しましょう。みなさまもいろいろ知識をもってそれらを楽しめるといいと思います。

追記:190625
アンボイナガイ
アンボイナガイの矢舌(しぜつ)の写真が古いので
新しいの撮り直そうかなぁ、、、っていうことで顕微鏡下でぱしゃぱしゃと撮り直しました
アンボイナガイ

アンボイナガイ

アンボイナガイ

アンボイナガイ

アンボイナガイ

アンボイナガイ

アンボイナガイ

アンボイナガイ


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Posted by ヤポニカ at 19:39│Comments(2)
この記事へのコメント
生きたのは見たこと無いですね。貴重な教材ですねぇ。
Posted by YUJI at 2011年04月27日 19:57
いやぁ今日は楽しかったです
最初素手でいじくり回してたんですがなんかガラス繊維みたいな物がキラキラしててそれから鉗子とピンセット作業で分離させました。
キレイな標本になりましたねぇ
Posted by ヤポニカヤポニカ at 2011年04月27日 20:07
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