流れ藻すくいシーズイン

ヤポニカ

2011年05月12日 14:16

例年よりナンボか早い台風1号が通り過ぎました。
今年は台風当たり年になるか、否か。う〜んアジア天気図からは読めませんが遊べることから遊びましょう。土人にはありがたい時代になりましてこんな風に波高、方向などを実況してくれております(気象庁さんあっりがとぉ)

国際気象(株)さんの波浪実況http://www.imocwx.com/cwm.htm

さてここからなにを読み取るか、貧乏プラプラ遊び道を邁進するためにはちぃとの知恵が必要です。と、もったいぶったところであまり内容は無いのでざっくりいうと「南の方から中城湾側に表層流が来ている」ということがわかります。そのため海水表面に浮いているものは今まさに中城や本島南部に絶賛集結中!ということがうかがえます。

じゃあ何が表層に浮いているかというと最初に話した台風一号さんのいい仕事っぷりが関わってきますが内地でいうガラ藻場を構成するホンダワラ(Sargassum属)をはじめとしたモクと呼ばれる海藻(ヒジキもこの仲間)が台風の波浪によりぶちぶち切れて漂っております。あまり派手な生き物はいませんがこの中の世界はそれはそれで奥の深いものですので早速見てみましょう。

用意するもの
●やる気
●タモ網(柄のなるべく長いもの)
●コマセバケツ(ふたのしっかりできるもの)+ロープ
●エアポンプ
です

漁港に着いたら

港の縁をチェックします

水に浮いている流れ藻は風上にはいません。その時の風をみて移動します(ここははずれ)

少し汚く見えますがホンダワラ類が混ざってます。これが流れ藻です。で、さっそく何も考えずにすくいます。

すくったらホンダワラを振りながら海に戻していきます

するとタモ網の中には

流れ藻に隠れていた生き物が残る、という寸法です。

これはアミアイゴ、スクガラスの元になるアイゴの子供ですね。

アップにしたらこんな


こんな大物も採れました。クロホシマンジュウダイです。スキャットファーガスという名前で熱帯魚としてたまに見かけるヤツです。

通常5mm〜2cm程度のものがよく採れ、このサイズになると流れ藻を離れて沿岸に移動するんですけどねぇ。離れる寸前だったかも知れません。

ニジギンポ、こんな魅力的でない格好してますが藻に隠れて近づいてきたものにかじりつく、なおかつ牙に毒を持つ、というなかなかかっこいい武器を備えております(かまれると結構痛い+血が止まりにくい)

口が180°近く開閉し下あごに不釣り合いなほどの立派な牙があります。


さんざんすくったら後片付けです(今回は藻が少なく、ちょっと不漁)

海で仕事している漁師さんに迷惑にならないようにすくった藻体は海に戻しましょう

これで取りのがした生き物がまた戻って来れます。

ホンダワラ類はなぜ浮かぶかというと

こんな感じの藻体ですがよく見ると丸いつぶつぶが見えるかと思います。

この丸いのは中に空気の入った構造で浮きの役割をしています。
これが藻体の色んなところにあるため、ホンダワラ類は岩礁に生えている時は垂直に成長でき、高密度で群生しても根元まで十分に光を届かせることが出来るようになっています。また、波浪などで藻体が切れてしまうと浮きが藻体全体を水面と平行に保ち、十分な日光をえて成長し続けられる、というなんともサバイバリティの高い生き物なのです。このような生活スタイルにちゃっかり便乗した生き物が流れ藻の生き物です。

世界の海には大きな流れがあり、それを海流といいます。

琉球列島周辺には黒潮という暖流(低緯度から高緯度への流れ)が通っておりこの流れは遠くアメリカ大陸に到達しています。ホンダワラ類はこの流れに乗り、途中途中の浅い海域に子孫を残し、流れ藻を供給し続けるのです。流れ藻生活者のなかには一生沿岸とは無縁の、外洋のみで一生を終える生き物なんかもおり、長い時間をかけてアメリカと日本の間を漂い続けるのです。

今回のような台風や、強風が吹くと本流から外れた流れ藻が生き物を乗せたまま漁港などに入り込むのでそれをすくうことで普段は見られないパン・パシフィックな生き物たちに出会えるというのがこの流れ藻すくいの肝になります。今回は入っている生き物が沿岸域のものばかりでおそらく藻体が切れてすぐたどり着いたものばかりと思われましたが今年は折りをみてすくいにいこうと思ってますので機会があればまた紹介します。とにかくこれから先、風向きによっては色んな旅をしてきた日陰者たちに出会えるような季節が来ましたよ、ということで皆さんも(海に落ちないように気をつけて)試してみてはいかがでしょう。

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