つねづね作ろうと思っていた物をネットで見かけて即購入。便利な世の中になったもので採りにいかなくてもいいのですねぇ。
スナヤツメです
こんただヒモ状の体型をしております、ので“ウナギ”の名前がついています(日本人は見た目で和名をつける名人です、細長いものは○○ウナギ、まるっこくて魚らしいと○○タイ、などなど)
でよくみるとかわいい顔をしてますね
名前の由来はこの頭を見ると判ります
本来の目の他に丸い鰓穴が7つ、体の側面に開いています。これらを目としてカウントすると
1+7=8で 八つの目を持つウナギ(細長い魚) なので ヤツメウナギ と。
このいわゆる“ヤツメウナギ”というやつ、日本にはスナヤツメとカワヤツメがいとりますが、食卓にあがるウナギとは全くの別物です(おばあちゃんの原宿、東京は巣鴨にヤツメウナギの専門料理店がありますので一応食用にもなります)。
この仲間は無顎類(むがくるい)と呼ばれる仲間のなかの円口類(えんこうるい)という口がまん丸いヒト達のグループに属してまして私たちと同じ脊椎動物ですが顎がなく、吸い付いて餌をとる、
という生き物です。腹側からみると口の辺りは肉がスカート状に肥大しており、これと口内の鰓を膨らませることで口腔内に陰圧をつくり吸盤のようにして魚の体表などに寄生し、体液を吸うなどして生活する生き物です。
他にも現在地球上には無顎類としてヌタウナギという深海性のかっこいいのがいとりますがそれも手に入れば記事にしたいものです。
さてなんでコイツをわざわざ手に入れたかというと
ほしかったんです、、となるのですが少し補足を
土人的には地球という場所はとても面白い場所でして、いろんな“落とし物”が落ちている、ある種雑然としたおもちゃ箱のような存在問いえると思っとります。うまいこと整理する力があればそれらを斜め見するだけでとても楽しい時間を過ごせるものです。
今の我々は5億年以上前に大発生したカンブリア紀の生き物の子孫にあたるわけで、その後に続く長い脊椎動物の進化の過程を経て、陸上生活を獲得、哺乳類にたどり着いたと考えられています。その過程を一つ一つトレースし、明らかにするのが過去の客観的な情報(証拠)となるいわゆる“化石”なわけで、化石に残る様々な情報のうち、体の構造やらなんやらを整理して時系列に載せていくことで進化の道筋が明らかになってきています。
面白いのがここで新しい、より有能とされる生き物が出現し繁栄する一方で、取り残された種はどうなるか?と言う点です。多くが絶滅し、化石でのみ知る所となるのですが極まれに当時の体の構造をそのままに現代まで生き続ける生き物がいたりするのです。それらはまさに生きた化石であり、地球の大きな忘れ物であり、貴重な生きた教材となるのです(以前記事にしたラブカというサメもこれと同様の地球の忘れ物の一つです)。脊椎動物が地球上に姿を現し、その後進化の過程で鰓にある骨(鰓弓:さいきゅう)が顎へと形を変え、大繁栄をとげるのですが、この無顎類はその前の段階(顎という摂餌器官を獲得する前)の体の仕組みを持ったまま現代まで生き続けているという、脊椎動物の体の仕組みを理解する上で非常に根本的な構造を持っているのです。7つの鰓穴は7本の鰓弓があることを示してます(そこまできっちりとした分化は見られないようですが)、原始的なサメ、ラブカでは鰓穴が6つ、鰓弓が6本+顎、原生サメ類では鰓穴5つ、というように進化の過程で鰓弓の一部が顎へと分化し鰓弓の数が減っていきます。
硬骨魚類(いわゆる我々)が出現する遥か前に分化した生き物ですので当然骨格は軟骨が主体ですし
硬骨魚類のウナギのような胸びれなどのしっかり分化した鰭もありません。
と、こんな生き物がいるってだけで
いやぁ面白いなぁ、と楽しくなるのですが 今回手に入れたのはもう一つ試したいことがありまして
最近頑張って作ってる透明標本にこいつもしてみたいのですがこの仲間はどうもうまく行かないようで、その原因が軟骨がうまく染まらないとのこと。コンドロイチンの構造が違うのか、脂肪などの阻害物質が強固なのか、はてさてですが、、。
少し標本使って試してみたいと思っています。
とにかく脊椎動物が進化していく過程で色んなものを獲得するわけですがコイツはその前の状態、を色々残したまま、絶滅もせんと現代まで生き残ってくれた地球の壮大な忘れ物の一つなのです。実際に見せるだけでもこの手の話をする際の強力な補助教材になってくれるでしょう。で薬で眠ってもらって ほ のなかへ
出来上がったら1尾ごとに透明化して保存っす
小ネタでした